フエキ ミカ    FUEKI Mika
   笛木 美佳
   所属
人間文化学部 日本語日本文学科
 
近代文化研究所 所属教員
 
文学研究科 日本文学専攻 博士前期課程
   職種
教授
発行・発表の年月 1993/03
形態種別 その他
標題 夏目漱石における〈自然〉 (修士論文)
執筆形態 単著
概要 夏目漱石の〈自然〉への志向が最初に現れるのは「英国詩人の天地山川に対する観念」(明26)であるが、彼固有の〈自然〉が濃厚に出現するのは「それから」以降である。「それから」は代助に焦点を絞り、鋭く内面を描き出した点でも従来の作とは一線を画しており、漱石はこの作品で知識人と〈自然〉との関係を問題化し、続く「門」で社会と〈自然〉との関係にも目を向けた。それと並行して、漱石は人間存在の追求も行っている。特に大患を経た後期三部作では、主要テーマとなっており、「こころ」の先生において不可思議な自己をありのままに認め、生命を賭して「私」に語ることで自己の相対化をはかり、知識人としての存在の場を確立するという一応の決着をみている。この人間存在の追求の過程は〈自然〉にも反映し、「こころ」の先生に至って「私の自然」が登場する。これは「私の」という所有語が付された初めての〈自然〉であり、また「それから」において曖昧になっていた個人の〈自然〉、自己の内なる〈自然〉である。ここに〈自然〉の新たな転機を読み、以後「道草」「明暗」に受け継がれ、追求されることを指摘した。